CAD on VDI 導入によるファイルアクセスの迅速化
ダイハツ工業株式会社様について
ダイハツ工業株式会社様は、燃費性能と基本性能および先進装備を低価格で実現しつつ独創的なデザインで軽自動車の概念を覆してきた「ミラ」「タント」「ムーブ」など、市場から支持されるクルマを次々と送り出している軽自動車業界のリーディングカンパニーです。世界のメーカーとの競争が激化する中、商品・技術開発のスピードアップに貢献するソリューションとして、CAD on VDIを導入されました。
選定のポイントと導入プロセス
迅速な仮想環境の構築とアプリケーションに適したチューニングでCAD on VDIが実現
2015年3月にはVDIの具体的な比較検討をスタートし、Citrixや他のVDI製品の性能やサポートの検証を複数のベンダを通じて始めましたが、「すぐには満足な結果を得ることはできなかった」と、生産技術部 生産管理室 副主任 山田昌徳氏が話します。
「実は、他のベンダとの間で先に検討を始めていたのですが、そのときはCitrixの実力が充分に分からなかったので、別のシステムのサポートで付き合いのあった電通総研セキュアソリューションに声を掛けました。電通総研セキュアソリューションはすぐに社内システム環境内にテストサーバを持ち込んでCAD on VDI環境を構築し、2015年7月に実業務のデータを使ってCitrixの検証を始めました。実際のネットワーク環境でのスピードはもちろんのこと、工場や海外などを想定した遅延装置による検証でもCitrixは画面の転送速度が落ちず、他の方式と差がはっきり出たことから、翌月の8月に電通総研セキュアソリューションとCitrixの採用を決定しました。」(山田氏)
CADをはじめ設計に用いる多くのアプリケーションは元々物理端末向けに開発されており、仮想環境でトラブルなく稼働させるにはチューニングが必要です。 電通総研セキュアソリューションは実績に基づきCAD on VDIの画面転送に最適なチューニングを行いました。その環境下でダイハツ様は検証作業を実行し、不具合が生じた場合は電通総研セキュアソリューションが再度チューニングをするという、その対応を密にすることでトラブルを解消していきました。その結果、Citrixの性能を十分に認め、CAD on VDIを16台構成で導入することを正式に決定しました。
「2015年9月末に製品一式が納品され、10月半ばにサーバ構築やチューニングを完了、11月に一部ユーザーで試行運用を開始しました。そこでも試行時には発生していなかったトラブルを迅速に解決してもらい 、2015年12月から正式に部全体での運用がスタートできました。」(山田氏)
CAD on VDI導入による効果
ロケーションフリーやレスポンスの早さを実感してユーザーが急増
CAD on VDIのソリューションは、ユーザーの業務スタイルを早くも変えつつあります。
「一度利用したユーザーはCAD on VDIの優位性をすぐに理解しているようです。例えば、設計部門から図面を確認してほしいという依頼が来たとき、これまでであればCAD PCが設置されている席へ移動してから利用していたのですが、CAD on VDIでは自席のPCから仮想CAD デスクトップ環境にアクセスし、CAD環境を利用することができるようになったのです。また従来データが保管されているファイルサーバから、拠点のCAD PCへのデータの読み込みには40〜50分と多くの待ち時間がかかっていました。CAD on VDIを導入することで、ファイルサーバとの距離が近い場所に仮想CADデスクトップ環境があるため、データの読み込み時間を5分以内と大幅に削減することができました。
各工場から検討に使ったり、ダイハツ九州株式会社の出張先からデータにアクセスしたりと、利用シーンも広がっています。」(山田氏)
生産技術部が集計している利用データによると、CADユーザー数百名のうちCAD on VDIを利用したユーザーの数は、2015年12月は約70名、2016年1月は約120名、2月は約180名という結果でした。
「導入したシステムが稼働開始後これほど急速に浸透したソリューションは初めてだと思います。しかも、プレスや塗装、組立など、満遍なく幅広い業務のユーザーが使用していることや、一度利用したユーザーのリピート状況やユーザー間の口コミでの広がり方もこれまでにないもので、良い反応を実感しています。」(山田氏)
導入前後のシステム構成イメージ
今後の展望
システム拡大を見据えて課題解決と運用改善に向けて取り組み
幅広いユーザーにCAD on VDIが浸透する中、システム拡大の期待が高まっていますが、利用データを分析すると現状のスケールで解決しておくべき課題も見えてきました。
「稼働3ヶ月目での稼働率が60%なのですが、これだけユーザーから好感触なのに稼働率が今ひとつ伸びていないと感じています。その原因は、利用したいユーザーが必要以上の時間を予約してしまっているのか、特定の時間帯に集中して分散がうまくできていないのか、アプリケーション台数のミスマッチなのか、いろいろ考えられるので、利用状況の見える化などに取り組み、稼働率を80〜90%まで引き上げたいと思っています。」(坂東氏)
同時に、システム拡大に向けた検討も具体化しています。
「ソリューションの有用性が確認でき、当初予想を上回るユーザー数が活用していることもあり、システム拡大を検討しています。ただ、スケールアウトするにあたり、サーバがダウンしたときのことは考えなければなりません。トラブルになった際の対応は物理端末に比べて複雑化していますし、万が一、サーバがダウンしてしまうと16台の端末全てが使えなくなってしまいますよね。そうならないよう、台数を増やしたらどちらにも回れるような構造にしておく方がいいか、ソフトウェアライセンスなどの条件も含め、トータルに最適化を図るための検討も並行して進めています。」(山田氏)
また、VDIの機能やアプリケーションの認証についても多くの改善策をあげる中で、VDIソフトウェアメーカーのCitrixや電通総研セキュアソリューションに対する期待を込めて話しました。
「CAD on VDIは共有の仮想CADデスクトップ環境として用意し、自社の予約表に日時を申請してユーザーが利用する方法で運用をしているが、CAD on VDIシステムを誰が使っているのか予約表を見ないでもユーザー側で判る、利用者を特定できる仕組みをぜひVDIの標準機能にしてほしいと思います。 また、より多くのアプリケーションが仮想環境との連携保証をしてくれることを期待しますが、現段階では追いついていない状態なので、そこをサポートする役目を電通総研セキュアソリューションに期待しています。例えば、自動車業界や他の製造業でCAD on VDIの導入実績をもつ電通総研セキュアソリューションだからこそ蓄積されている不具合の事例やトラブルの予兆を情報共有してもらい、危険予知に向けたアクションを期待しています。もちろん、価格が今後下がってくることもシステム拡大の重要ファクターなので、大いに期待しています。」(山田氏)
※所属・役職は取材時点のものです
商号 :ダイハツ工業株式会社(DAIHATSU MOTOR CO., LTD.)